常同行動とは何か? 動物園やサーカスを訪れる熱心な観察者は,異なる種類の動物において,下記のような異常行動と常同行動に気がつくことがある. 自分の子の毛だけではなく, 自分自身の毛を むしり取っているチンパンジー.自分と同種の鳥よりも,自分の飼育係に関心があるオウ ムやハクチョウ.柵の特定の (同じ) 場所を舐めているキリンやラクダ.自分の放飼場の縁に沿ってうろうろするエミュー, レア,ダチョウ. 自分の檻の中をグルグル歩き回って いる肉食動物. そして 本章で説明する自分の頭を左右にリズミカルに振る (揺れ動かす) ゾウ. この行動は,正常か (自然か) ? 動物園とサーカスの多くの観客にとって は, 体や頭を左右に振るゾウは, まったく 正常に見える. 大人は,この行動が,ゾウのダンスの方 法であると自分の子供たちに説明する.サ ーカスの支配人ですらも, ゾウが居眠りす る間 自分の鼓動 (心拍動) に合わせて ゾウは左右に揺れ動かなければならず, そして, この揺れ動きは,ゾウが落ち着く効果があると観客や公衆に教えている. しかしながら,この常同行動は,ゾウの自然の行動 ((動き) ではない.野生のゾウたち は,毎日,自分が生き残るために頭が一杯だから, 常同行動をきたすような暇を決しても たない. あなたは,この左右に揺れ動く行動を何と名付けるか? ゾウの飼育係たちは,これらの常同行動を「はた織り(weaving) 」と呼ぶ.種々の異なるタイプの「はた織り」をするゾウたちが知られている.動物園とサーカスのゾウたちの中のある ゾウでは,足を挙げることなく,体や頭を左右や前後に非常に穏やかに揺れ動かすだ けである.他のパターンでは,鼻の揺れ動 きに伴い足を開いて,地面に覆いかぶさる ように(頭をかがめて鼻で地面を擦らんば かりに)はたを織る.若干のゾウたちは,頭をめまぐるしく, ぐるぐると回したり,一歩前進と一歩後退 ...