ゾウ痘は,どこで発生したか? ゾウ天然痘は,1960 年に初めてライプツィヒ動物園 (ドイツ) で発生し,翌年以降, 主として中央ヨーロッパの多くの国々に蔓延した. ゾウ痘は,どのようにして伝染するか? たいがい ハツカネズミとドブネズミのような齧歯類が このウィルス感染症を伝播 ( 媒介) する.このウィルス感染症の伝播経路は,ネズミの糞尿で汚染された飼料 (エサ) である (Mice and Elephants の章を参照). ゾウ痘の初期症状は,どのようなものか? 舌に,丸くわずかに膨らんだ潰瘍性の病変ができることが この疾患の初期症状である. 1 週間後に ゾウの全身は,典型的な天然痘の病変 (水痘=水ぶくれ) で覆われる.罹患したゾウの全身状態は,ますます悪化 し ゾウは何も食べたり飲んだりしなくなる. 続いて起きる症状は何か? しばらくして,罹患しているゾウの足に,病変が発 見されることがある. 重病のこのゾウの蹄冠部 (爪の生え際の皮膚) から, 漿 液 性の液体がにじみ出はじめる. 翌日には,足の角化した皮膚が,足の底面 (足裏) から剥離し始める. これは,全ての足裏がなくなる危険性をはらんでいる.このことは,全ての足裏が脱落してしまったゾウは,足裏組織の直上に存在している保護されていない組織 (すなわち真皮) で立っていな ければならないことを意味する. ゾウ痘は治療できるか? ゾウ痘を患っているゾウに必要な治療と看護の総量 は膨大である. 集中治療と,そのゾウの飼育係が絶え間のない世話をしなければ,そのゾウを救命できない. ...