ゾウは,本当に「厚い皮膚で覆われているか」? ゾウが,厚皮動物であるという表現 (言葉) は,ただ単に,部分的に正しいだけである.鼻と口の周り,四肢,背中のような攻撃を受けやすい部分の皮膚は,2.5 ~ 3 の厚み がある.しかし 耳の後ろ 目の回り 腹部 , 胸部, 肩の皮膚は紙のように薄い. 初めてゾウの皮膚に触れる人々は,しばし ば,それを と言う. なぜ,ゾウは厚い皮膚が必要なのか? ゾウの重量と体の内部からの圧力 (腹腔圧) を支えるために,ゾウは厚い皮膚が必要である.このことは,パンを買う際の包装袋に喩えることができる.1 kg のパンを買った場 合には,そのパンは薄い紙で包装される.20 kg のパンを買った場合には,それらのパンをまとめて持つために,厚くて丈夫な紙袋が必要となる. 獣医師は,ゾウの皮膚を切開できるか? ゾウの分娩の際に,帝王切開術によって救命を試みることは,ゾウの体の内部からの圧力 (腹腔圧) のために,ほとんど不可能である.切開創から,腸があふれ出て,腹腔内に押し戻すことは ほとんどできないだろう. ゾウの難産の際に できることといえば, 肛門と膣との間を切開する会陰切開術である.しかし,この手術もまた非常に危険であり,母ゾウの生命を救うために,最もひどい症例においてのみ適用される. 例えば 会陰切開術の術 創は 普通の縫合糸で縫い合わせることは不可能で (あまりの張 力により,太い糸でも切れてしまう), ワイヤー (鋼線) を用いなければならない. ゾウの皮膚は敏感か? ゾウの皮膚は,その厚みにもかかわらず,非常に敏感であり,豊富な神経を有する. ゾ ウは,自分にくっついた全てのハエに気がつく! なぜ,何頭かのゾウが 「白」に近いのか? ...
ゾウのヘルペス(疱疹)
どの疾患が,ゾウにとって非常に危険か? ゾウの天然痘 (Elephant pox), 結核 (TB), ゾウヘルペス (EEHV), は,あらゆるゾウ舎の上にダモクレスの剣のように吊されている. 天然痘 過去 2~3 年において,ゾウの天然痘は,主としてドイツで観察された (Smallpox の章を参照) . 幸運にも,ス イスのゾウたちは,今までこの疾患を免れてきた. 結核 結核は,チューリッヒ動物園のメスゾウの Thaia に死を もたらした. Thaia (30 歳) の健康状態は,原因が解らないまま,慢性的に 2 年で非常に悪化したので,安楽死させなければならなかった.病理学者は,剖検によって, かつては丈夫で健康だったゾウを急激に衰弱させた原因 が,結核であったことをすぐに発見した. ヘルペス ヘルペス(疱疹)とは,漿 液を含んだ小 嚢(小さな水疱)がたくさんできる皮膚病に対しての一般用語である.疱疹の原因の大部分は,真菌類(カビ)やウィルス感染症であ る.無害なヘルペスウィルスのうちの つは,我々人間に単 純 疱 疹(口唇ヘルペス)を引 1 たんじゅんほうしん ...
ゾウに使う手鉤,アンカス,ゾウ用フック
ゾウ用のフック(手鉤)とは何か? アンカス,あるいはゾウ用フックは,ゾウの飼育係の日常会話では,簡単にフック(手 鉤)と呼ばれており,人間がゾウを取り扱うための補助道具であり,非常に歴史が長いも のである.古代のアジアの絵画における象使いは,すでに手鉤をいつも持っている. 現代のゾウ用の手鉤は,これらの絵の手鉤ほどは恐ろしくはない(大きなフックと大き な槍ではない .アジアの一部の国々では,フックは,依然として,ゾウたちにかなりの ) 恐怖刺激を与える道具として使われており,ゾウたちは,このフックにより命令されてい る. 現代のアンカス(手鉤)は,どんな形状か? 西洋のサーカスと動物園では,一部の飼育係たちが,髭剃り用ブラシ大の大きさや,も っと小さな手鉤を使ってフックの先端(尖った部分)を隠そうとしているが,その先端は 釘のように鋭い.大きさは小さくとも,ゾウに対する影響(効果)は大きなフックと同じ ままである. ゾウの管理人は,何のためにフックを必要とするか? 手鉤は,象使いとゾウの飼育係や調教師が,自分の命令をゾウに示す (主張する,断言 する) ために役立つ (使う). ゾウの飼育係は手鉤を使って,ゾウを「引き寄せたり 」「押し下げたり (バック) 」させることができる.これは,ゾウが手鉤の鋭い圧力 (痛み) から,とりあえずは,逃げたいからである. 手鉤は,どのような鋭さがなければならないか? 手鉤は,最小の力で命令に従う効果が起きるよう に,非常に鋭く磨かれていなければならないが,ゾ ウに負傷を引き起こすほど鋭くてはならない. 手鉤が,どのように使われているかを,観客 はどうやって知るか? 動物園やサーカスの飼育係や調教師が,どのように手鉤を使っているかを,有能な観察者は,かなり 早く知る (解る). 手鉤を酷使された ...